ホテルや旅館のベッドやマットレス寝具は,どのような過程を経て納入される? 施設がオープンするまでのプロセスを徹底解説

旅行や出張等で皆さんがよく利用されるホテルや旅館。その客室に納入されている備品の中で、最も大きくて、尚且つ、宿泊客が長時間、身体に触れることになる物といえば、ベッドでしょう。

ホテルや旅館のマットレスやベッドは,どのようにして客室に納入されている? 施設がオープンするまでの過程について徹底解説 — ホテル旅館のベッド

本日は、そのベッドやマットレスは、普段、どのようなプロセスを踏んで客室に納入されているのか、少しみてみたいと思います。

クリックできる目次

1 アプローチ
2 打ち合わせ・プレゼンテーション
3 設計・製造
4 モックアップルーム施工・検査
5 商品製造
6 工場見学
7 納入受け入れチェック
8 搬入工事
9 検品・試泊
10 オープン(開業)
11 まとめ

アプローチ

ホテル旅館の内部のインテリアの打ち合わせは、まだ建物がその形をあらわしていない基礎工事の段階から既におこなわれています。

ベッドを販売する営業マンは、ホテル旅館の開業準備室や、設計事務所・ゼネコン・インテリア事務所など、ホテルインテリア設計の元となる窓口を訪れます。

ホテルや旅館のマットレスやベッドは,どのようにして客室に納入されている? — ホテル旅館への営業活動

同じホテル旅館内でも、社長・役員・総支配人・女将・宿泊支配人・施設部・管財部等・・、色々な人がインテリア工事(F.F.E.工事)に関わっています。

日本のホテル業界では、昔から日本を代表する、帝国ホテル、ホテルニューオータニ、ホテルオークラ等の御三家ホテル様をはじめとする既存ホテルに加え、最近では、リッツカールトン、ヒルトン、コンラッド、マリオット・・・等、外資系ホテルの進出も多く、そのため、外国人デザイナーや支配人の存在も業界では多くなっています。

また、旅館業界においても、従来の「和」の伝統だけでなく、外国人観光客を意識した和モダンの施設も増えています。

打ち合わせ・プレゼンテーション

日本国内でベッドや寝具を扱う会社は沢山ありますが、大手ホテル旅館に納入する業者として最終選定の土俵に残れるのは、実は数えるほどしかありません。

それは、永年のホテル旅館運営の中で、ベッドや寝具は宿泊のお客様に安眠を提供する為の最も大切な機能のひとつという位置付けで、厳しいプロの目で品質や寝心地、ベッドメイクのし易さ、最近では、ビルの高層化などにより、防災面での安全性機能を有した防炎機能などもチェック事項に加味され、且つ、会社内容までを総合的に比較検証され厳選されるため、大半のベッド業者・寝具業者はホテル業界からは淘汰されてしまう厳しさだからです。

ホテル旅館の業務用マットレスやベッド寝具が安心安全な理由とは？

開業準備室で、実際にホテル旅館を運営する現場スタッフの人達との打ち合わせや会議は、これからオープンしようとするホテル旅館のコンセプトを把握したりインテリアの企画設計をする上でも最も大切です。

現場から持ち帰った建築図面・フロア図面や、ホテル旅館のコンセプト等を元にして、インテリア計画のレイアウト提案や商品提案を作り、ホテル旅館関係者に対してプレゼンテーションをおこないます。

設計・製造

何度にも渡る打ち合わせを経て、客室レイアウトや、個々のインテリア商品の図面製作や商品の試作に入ります。

建物の形やデザインが各ホテル旅館によって異なるのと同様、中のインテリアのレイアウトや家具類についても、各ホテル旅館によってそのデザイン・仕様はすべて異なりますので、一部のアイテムを除いて、すべて特注扱いになることもある厳しさです。

現場やアイテムにもよりますが、デスク・チェスト・ヘッドボード等の木製家具類や椅子等では1/1原寸図が必要な場合もあります。

木部塗装の色や、ファブリック生地等も、別注で各ホテル様のオリジナルになる場合が多々あります。宿泊客は大変よく見ていますので、他のホテル旅館で使われていた生地が別のライバル施設の部屋でも使われているというのはホテル旅館側もなるべく敬遠します。

製造工場は全て日本国内で、生地の縫製は縫製専門の国内工場でおこない、ベッド本体も、ポケットコイルのひとつひとつや枠線の一本一本に至るまで、国内の高級ホテル旅館ベッド工場で製造します。

一流ホテル旅館で採用されるのは、何万回という耐久性テストにも合格し、科学的にも高品質を立証されたベッドのみです。

モックアップルーム施工・検査

大きなホテルの場合、事前にモックアップルーム(モデルルーム)を作る場合が多く、これは、以前に別のページでも紹介させて頂きましたが、建築現場からほど遠くない場所に一定期間だけ設けられます。

モックアップルームのベッド、モデルルームのマットレスとは?

場所は、ホテル旅館建築現場の工事中の客室を2～3室利用して作られる場合もありますが、現場内ではなく、開業準備室の一角であったり、ゼネコンの資材倉庫であったりします。

(改装工事・リニューアル工事の場合は、既存の客室を売り止めにしてモデルルームとして利用します)

モックアップルーム(モデルルーム)を作る建物の外観はプレハブ造りなど、大変質素ですが、中は実際のオープン後の客室をそのまま再現しますので、本格的な作りで、実際に泊まれるのでは・・?と思う位です。

これは、マンション等のモデルルームにも近いものがあります。ただ、マンションのモデルルームでは、より多くの人に見てもらわねばならないので、目につき易い作りで、より目立つ場所にありますが、ホテル旅館内部のインテリアは、そのホテル旅館がオープンするまでは対外秘ですので、関係者だけが入って見られる様になっています。

モックアップルーム(モデルルーム)は、ホテル旅館の社長や総支配人・宿泊支配人・女将・施設部・管財部、関連会社、設計事務所、インテリアデザイナー、ゼネコン・・・さまざまな関係者が見て、その都度、商品検査します。

ベッドや寝具、家具などに関しても、科学的な数値根拠による試験はもちろんのこと、実際にホテル旅館がオープン後に泊まる宿泊客の目線に立った、感覚的な検査や、はたまた、商品の中身の仕様を確認する為、商品を少々手荒に切り裂いたりと・・・色々な方法で検品は行われます。

大型のホテル旅館になればなるほど、関係者の人数も多く、より審査も厳しく、色々な検査がおこなわれます。
チェックする側は、百戦錬磨のプロの人達ですので、測定器などに頼らずとも、長年の経験に裏打ちされた一瞬の感覚的な判断で、ものの良し悪しを見分けられるほどです。

商品製造

その後、窓口の人達の意向によって、仕様変更、図面の書きかえ、試作の作りかえや、打ち合わせ等・・・を経て、最終的に商品の仕様や数量等の詳細が決定されると、いよいよ工場で本番商品の製造にかかります。

全客室に向け大量に作りますのでミスは許されません。細心の注意を払って製造します。

基本的にホテル商品は全て日本国内工場で製造します。

工場見学

途中、ホテル旅館関係者による製造工場の見学がおこなわれる場合もあります。遠路、製造現場まで直接足を運び、製造工程を見学・チェックされます。

製造現場を見ているのと見ていないのでは、宿泊客から何かホテル旅館側に質問があった時等、宿泊客への説得力が全然異なります。

また、作る側にとっても、施設の責任者が直接見に来るとあっては、製造現場の緊張感も高まります。

納入受け入れチェック

一方、ホテル旅館の建築現場でホテル旅館の躯体が徐々に出来あがってくると、実際の客室となる部屋での実測も必須事項です。

特に木製家具関係は、ベッドの頭元によくある、ナイトスタンドや、客室灯やエアコンのスイッチ、時計等・・・客室の弱電工事との配線の取り合い等もありますので、事前に電気業者との打ち合わせも必要となります。
稀に、建築の図面と実際の室内の寸法が若干違っていたり、床や壁から配線が出てる筈の位置から線が出てないなんてことも・・・。